だいちのこと嘘つき日記

本当と嘘とその間の隙間

兄メモ

愛は寂しさと隣にあるものだろうか。
そういい残された。
日記のメモを境に彼は、この世からいなくなった。
 
それを知ったのは私の誕生日のことだった。
小包が私の家に兄から来た。
 
プレゼントの真新しいパソコンと兄が使っていた携帯電話。
そして、遺書。家の鍵。
 
 
私の兄は、仲の良い友達10人にそれを伝えて欲しいと書いてあるだけの
遺書を私に送ってきた。
私と兄は10歳歳が離れている。兄は中学を卒業して
家を出た。私が物心がついた5歳の時だった。
それから、兄は家にはあまりかえって来ず、顔を見るのは2年に一回程度だ。
兄はいろんな人から好かれていた。私も兄が好きだった。
いつもおどけていて、たまにすごく真面目で、
帰ってくると私の部屋に来て、いろんな異国の話や、最近見た映画や、小説、音楽。
いろんなことを私に教えてくれた。
 
私はそのたびに深くうなずいて、そして笑っていた。
私は昔のことを思い出しながら、頭が混乱していた。
何故?どうして? そんな言葉ばかりが頭に浮かぶ。
体は勝手に動いていて、バッグに携帯電話、遺書、家の鍵を持ち
兄の住む家へ向かった。
 
チャイムを鳴らす。鍵をあける。
 
兄はそこで首をつっていた。
私は鍵をしめ、携帯電話をかえた。
 
「お母さん、お兄ちゃんが死んじゃった。」
涙声で母に電話をした。
 
私はそこに立ちすくみ。
父母が来るまでそこで立ちすくんでいた。
それからの記憶はあまり無い。
 
父はそそくさといろんな手続きをし
いろんなところに謝罪に行き。
母は私の傍にいてくれた。
 
それから、1年後。
私は兄を思い出さないようにしていた。
兄からの小包に入っていたものを中に戻し。
押入れの奥の方にいれておいた。
 
兄が死んだ1年はあまりに早く。
また熱い夏の日が来た。
 
扇風機を押入れからだすと
奥の方にあった小包が見えた。
私はそれを手にとり中を開けた。
 
ただ、知的欲求があった。
私は彼の携帯電話に電源をいれた。