首切り探偵
目を開けたら、そこは無数のビニール袋とまるまったティッシュが広がっていた。
布団の上で寝返りをうったら、隣にタバコの吸殻があった。
あぁ、俺は無職である。吸ったタバコをかき集めて
吸えるものを探す。しけったタバコに火をつける。
昨日は、安い麦常駐を飲みながら
公園で拾った小説を読んでいた。
とことん腐っちまった。
数ヶ月前までの生活はまるで夢だったかのように。
数ヶ月前、俺は一流企業で働く一流のサラリーマンだった。
一流といえば、それぞれあるが
合コンなんかで名前を出せば、モテるくらいの位置にある会社だ。
俺はそこで、びしっと決まったスーツを着て、働き
夜には、洒落た女とバーに出かけた。
毎日働き、女を抱き、何不自由なかった。
人生にはいろいろな転機がある。
悪いほうへ転ぶか、良いほうへ転ぶか、転ばずにいられるか。
俺はとことん悪いほうへ転んだ。それがこの座間である。
ある日、女に出会った。
人生を狂わせられる理由のだいたいは女なのだ。
それは一人で入ったバーで起きた。
ウイスキーを飲んでいると、
綺麗な女がたっていた。
赤いマニキュアをして、赤い唇をして、赤いハイヒールを履いていた。
「隣、いいかしら。」
「あっ、ど~ぞ。」
俺はその日は、仕事が上手くいかないせいでイライラしていた。
それは俺の出世を決める大事なプロジェクトだった。
自分の選んだ部下たちは有能で仕事も速い。スムーズにいくはずだった。
しかし、行く手を阻んだのは、その仲間達だったのだ。
もう、その時点で仲間ではなかったが。。。。
簡単な話だ。どこでもある話だ。
俺は出世しすぎたのだ。気づいたら、俺を妬む連中がわんさかいた。
周りを見たら、俺を貶めようとするやつらが俺を囲んでいた。
大事なプロジェクトは、破綻し
俺はその責任で地方に飛ばされるという話だった。
やけ酒だと、ウイスキーをたらふく飲んだ。
朦朧とした意識の中で、隣に女がたっていたのだ。
「隣、いいかしら。」
「あっ、ど~ぞ。」
「大分、酔われているみたいだけど。」
俺はうなずいた。
「世の中、嫌なことばっかりよね。」
俺はうなずいた。
そして、意識が消えた。
目が覚めたら、俺は真っ白なベッドの上で裸で眠っていた。
「あぁ、起きたの?」
俺は何が何だか分からなかった。
冷静を装うとした。
「ごめん、何も覚えてないんだ。」
「そうよね。大分酔っ払っていたから、私が連れて帰ったの。」
「で、俺はやったのかい?」
「そうね。やったわ。でも、大丈夫。私こういうの慣れているから、気にしないで。」
「今何時?」
「今7:00ね。」
「会社に行くよ。」
「うん。コーヒー飲んでく?」
「うん。飲んでく。」
それから、コーヒーを飲んで女の家を帰った。
会社に向かい、プロジェクトの再始動と、
部下の後輩がプロジェクトリーダーになるという報告を受ける。
そして、上司から呼び出される。
「達之君、大変なことをしてくれたね。」
「どうしたんですか。」
「昨日、君が抱いた女は社長の愛人だ。」
まぁ~そういう訳だ。
何が何だか分からないうちに、俺は会社を辞めなくてはいけなくなり。
こうやって、生活をしている。
俺はまた、しけったタバコに火をつける。
ピンポーン。
「はい、どちらさまでしょうか。」
「私。」
聞いたことのある声だ。そうだあの女だ。
「何の用だ?俺をはめておいて。」
「あなたに話があるの。いれて。」
「いやだ。」
「なら、外でお話をしましょう。とても大事なお話があるの。」
俺はその数ヶ月後、何故か探偵になる。