眠れないあの子と一緒にいる。
彼女の鼻歌を聞いたり、寝息を聞いたりして、夜が明けるのを待つ。
彼女が幸せになればいいなと僕は煙草をふかしながら思う。
きっと幸せになれるよと耳元で囁く。
僕は彼女の伸ばしている黒い長い髪を撫でる。
きっと彼女はお昼まで眠れないだろう。
あの頃僕らは夜中まで一緒にいた。
叔父さんの家の倉庫に忍び込んで
一緒にCDを聞いて、毛布に包まって話したね。
僕らはとても良い関係だった。
君は優しいキスを僕にはしたけど、
僕は振り向かなくなって
どっかのサッカー部の奴と付き合っていた。
あの頃は本当に良かった。
気づけば、僕らは大学生になり、東京に出てきたね。
その頃から、君はお金や車を持っているボンボンと酒をよく飲んでいた。
僕はといったら、いつもどおりロックを聞いて、酒を飲んで、煙草をふかし
髪を伸ばした。
井の頭線のホームで君を見た時
一瞬誰だか分からなかったよ。
綺麗な青のシャツとベージュのコットンパンツを履いた男と手をつないでいた。
あぁ、僕は何をやっているんだと思ったよ。
その次はいつだったか、そうだ。
ライブハウスで今度は、小汚いシャツを来た
綺麗な顔のギタリストと酒を飲んでいた。
僕は知らんぷりして、ビールを飲んでいた。
信じていれば世界は、君をさらってくれる。
分かり合うために必要なものは心臓の音を確かめる為に
耳を澄ますこと。
いつだってやり過ごす方法はいくつもあって
そのいくつかを僕らは選んでしまうことがあるだろう。
それもいくつかの中の一つの方法論。
でも、その心さえ持ち続けていれば、いつかきっと。ね。
そういうこと。
僕らは何かを求め合う。
それはいくどとなく形は変わり続ける。