あい
本当、たかしは私がいないとご飯も食べないのよ。
だから、こんな細くなっちゃって。
だって、あやと一緒にいないとご飯がうまくないんだよ。
と真面目な声でいう彼と、確かに美味しそうに笑って食べる彼女を見ていた。
私は彼がもっと、不思議な感じの女の人と付き合っていると思ったんだけど
思いの外、すごく健康的で素敵に笑う優しい人だった。
ものすごく食べるのだけれど、それが下品じゃない。
私もこの人のことをすごく好きになった。
私は聞いた。なぜ、たかしさんを好きになったんですか?
そしたら、二人とも見つめ合って、笑った。
「それがね。わからないんだよ。」
そう、二人ともいった。
なんとなく、居心地がよくて
一緒にいたら、なんとなく好きになったんだよ。
この人ってみんなに優しいじゃない?
だから、なんだかいけ好かないやつだと私は思ってたの。
でも一緒にいるとね。本当に不器用なの。
全部が不器用でだからこそ、そういうの練習してきての
優しさだったんだよね。ほら、この人、私にはじめてキスするとき
「よろしいでしょうか。」なんて言ったのよ。笑っちゃうでしょ。
私はそれでなんとなく恋を諦めた。
あぁ〜圧倒的だと思った。
二人はもう恋ではないのだ。
愛なのだ。だから、私のたかしさんへの恋ももろともしない。
そして、あやさんは私を傷つけないように、してくれている。
嫌な女を演じてくれているのだ。
たかしさんは、私の好意を知らないから、
優しくできるのだ。
そして、たかしさんは私のことなんか気にもとめてないのだ。
だって、たかしさんはあやさんのことしか愛していないのだから。