遠くて近くて遠くて近い。
僕は飛び跳ねている。
彼女を横に白い紙に手書きで書いてあるメニューを見ながら
「なんか、おなかがすかない?」
「なんか、趣きがある字が書いてあるね。」
字の上手さもあるがびっくりするのはその内容だ。
喫茶店のような料理が並んでいた。
僕らは冷蔵庫からビールを二つとって、ナポリタンとサンドイッチを頼んだ。
15分程待っていると料理が来た。
「これ、笑っちゃうくらいおいしいよ。」
サンドイッチを食べながら、彼女が笑ってる。
僕もナポリタンを食べながら、ものすごくおいしくて笑けた。
「不思議な城にきたもんだね。」
「ここはどこなんだろう。アンバランス過ぎだよ。」
「都会では味わえないよ。この味は。」
「そうだね。味があるね。」
僕らはそうしてお腹を満たした。
せっかくだからと大きな湯船に入り
最近彼女が出会った不思議な取引先のおじさんの話について話した。
「ねぇねぇ、それでどうなったと思う?」
「う~ん。なんだろ。」
「それがね。ずらをはずしたんだよ。
そして、手元にあったお手拭きで頭をふいたの。
私、笑っちゃいたかったんだけど、我慢をしてお茶を飲んでいたら
ふきだしてしまって、おじさんの顔にかけちゃったのね。」
「うんうん、それで?」
「それで、おじさん笑って許してくれたんだけど。」
「おー、それは良かったね。」
「うん。で、それで仲良くなったって話。」
僕は正直、何が何の話か分らなかったけど、うなずいていた。
それから僕らは、どこのだれでもカップルがするように抱き合って眠った。
朝起きたら、眩しいくらい太陽が光っていて
僕らは振り返らずにまた都会の街へかえっていく。
明日からは、また日常だ。対して面白く無く
対して、悪く無い日常だ。
彼女は言った。僕はうなずいた。
「ここがどこかは分からないけれど、すごくいいところ。」