だいちのこと嘘つき日記

本当と嘘とその間の隙間

遠すぎる街

僕は通り過ぎる景色を横で見ながら、ずっと遠くの方を眺めていた。 

特に何があるわけでもないのだけれど、緑が一面にあり
近くにあった電機メーカーの大きな看板だけが、

古びていて風が吹いたら今にも落っこちそうになっていた。

僕は彼女の運転する軽自動車に乗りながら、

助手席でCDを取り替えては、窓をあけて煙草を吸っていた。

流れてくる音楽がなんだかどれも聞きなれなくて

しまいにはラジオを流した。

知らない芸人が、最近会ったむかつく話を話していた。

僕らはそれを聞きながら、なんとなく笑っていた。

 

知らない街の知らない場所を二時間程、ドライブをしていた。

「どこへ行こうか。」と彼女はカーナビをいじりながらいうのだけど

僕はどこにも行きたくなかったので「どこへでもどうぞ。」

とタバコを加えながらいったら、

「興味が無いのね。」と彼女は微笑えんだ。

「地図ってなんでこんなにややこしいんだろう。」

彼女はおぼつかない手つきでカーナビを維持っている。

「道先が思い浮かばない場合は、電源をきればいいんだよ。

 んで、気が向いたら電源を入れて現在地を調べれば、帰ることは出来る。」

「でも、心配じゃない?」

「心配なんかいらないよ。なんとかなるよ。」

「そうかな?」

彼女は困り顔で電源をきった。

僕は最近聞いた歌詞がうる覚えの歌を口ずさんでいた。

 

時間がどれくらいたったのか、わからないまま。

僕は、もっともわかりにくい道を選んでは

彼女に「いいのね。知らないわよ。」

と言われて、笑っていた。

 

気づいたら、知らない森の中に入ってしまっていて

目の前にあった大きな古びた城は月明かりに照らされていた。

安っぽい名前のその城は、所謂その場所とはかけ離れていて

ギラギラというよりも、うっすらきらめているようだった。

 

フロントには老婆らしき人がいて

「おとな、2名。一番大きな部屋を」と言ったら

まるでピカピカの鍵を渡された。

 

なんだかカビ臭くしめった廊下を抜けて

映画にでもでてくるような安っぽいモーテルだななんて思いながら

部屋の前で鍵をさしこんだ。

 

「ねぇ、こんなところに誰が泊まるんだろうね?」

「そりゃ、あれだよ。セックスする男女が泊まるよ。」

「わかるのかな。こんな山奥に。」

「中は思いのほか、綺麗だね。」

「なんだか、楽しいね。」

そう言いながら、彼女は踊るようにして

ベッドの上で飛び跳ねていた。